「特別な響きなんだ」
その道中、和泉守兼定が遠くを眺めて口にした。
なんのことか。防具と竹刀と木刀をすべて持たされているトシミツがその横顔を見上げる。夕焼けに照らされた瞳は、炎を映すように揺らいでいた。
「オレを使ってくれたひとも、トシさんってんだ。名前くらいは知ってんだろ、土方歳三っつったら、チャンバラやんなら誰でも憧れちまうだろ」
「新選組の」
「おう!」
浅葱色の羽織がはためいた。特徴的なだんだら模様は、なるほどそういうものだったか、と、トシミツは納得する。
「あの人はオレを振るうのがそりゃあ巧かったさ。大事にもされたしな。だが思い出深くっていけねえや、名前が似てるってだけで、なんか重ねちまった。お前は仮の主、任務が終われば二度と会うこともねえのに」
付き合わせて悪いな。寂しげに微笑んでトシミツを見下ろす和泉守兼定に、なんと声を掛ければいいか解らず、青年は返す言葉に迷った。
一瞬目をそらし、もう一度目を上げたとき、和泉守兼定はもうトシミツを見ていなかった。
「いず、」
「シ、」
――いる。
夕刻から夜に入る黄昏の仄暗い路地、じゃり、じゃり、と、未舗装の田舎道を歩む思い足音。ゆらりと立ち上るように、あの怪物が現れた。
おいでなすった、と、和泉守兼定が帯刀した腰元に手を遣る。足を開いて腰を落とし、柄に右手を添えて、じり、と地面を踏みしめた。
「下がってな、ケンカのやり方、見せてやるよ」
そして、風が鳴る程に勢いをつけて、一瞬で怪物に迫る。
抜き放った刃が一文字に怪物を薙ぎ、巨躯が地響きのような咆哮を上げる。振り上げた刀を返し、頭の上から一閃、切り下ろして敵を屠った。
「――和泉守兼定!!」
鋭く響いた声に、羽織と髪を翻して、和泉守兼定が振り返った。
その背に迫る黒い影。和泉守兼定は、しゃがみ込んだ体勢のままだ。応戦するには不利すぎる。
やられる、と、トシミツは息を詰まらせた。
「そおら、目潰しだ!」
が、和泉守兼定は砂利を引っ掴み、敵の顔面に思い切りぶち撒ける。まるで、いつもやっていることかのように、だ。
身を低くしたまま脚を蹴り上げると、ブーツの底が化け物の顎部分をしっかりと捉えた。目を潰され、脳天を揺らされ、よろけた化け物は袈裟斬りに分かたれて呆気なく消滅する。
揺らいで消えていく靄を払って、刀を手にした和泉守兼定が気持ちよく笑いながらトシミツへと歩み寄ってきた。
「――出んじゃねえか、でかい声!」
兼さんが最高に兼さんでした!!(語彙)
なんだかんだ面倒見が良くて、気のいい兄貴ってカンジで!
トシミツくんも、兼さんとの別れで記憶はなくしたけど、これからの指標が見えたんじゃないでしょうか。
自分でもわからないなりに、土方歳三関連の資料を読み込むようになるかもしれないですね!
最高でした!読了後、爽やかな風が吹き抜けたような心地になりました!
素敵な作品をありがとうございます。
兼さんがカッコ良すぎる!!!!!
心の堀川くんがペンラと団扇をぶん回してました。
兼定をよろしくお願い致します。
トシくんの名前が出たとこでもう、うあーーーーて転がってしまいました。
兼さん、存在が格好いい兄ちゃんなのに、さらに格好よさあげてくるから最高……!誉!優!!ありがとうございます!!
最初は不本意な始まりでも、それを続けられるのは1つの才能。兼さんはそれも見抜いて、少年(青年?)と打ち込みをしたのかもしれないなと思いました。
記憶には残らなくても、なぜか体が、感覚が知ってる……って、後々まで不思議な気持ちになってくれるといいな、とか。
あまりの格好良さ、彼らしさに兼さーーーん!!!って声出してキャッキャしたい気持ちをグッと堪えて(拝読したのが夜中なもので)、兼さんが去った後の風をくんかくんかしたいと思います。(くんかくんか、もう死語だったらすみませんっ)
すごくすごく素敵なお話を、ありがとうございました!!
もっと拝読したいです!!!
読ませていただきました。短い出会いの中にも起きるトシの成長、さわやかな読後、言葉遣いの巧みさに、めちゃくちゃ引き込まれました。文章もプロなのですね!もっと読みたい!
電車の中で拝読し目頭が熱くなりました。
心の中でが暖かくなる素敵なお話を書いて頂きありがとうございます♪
最高の作品をありがとうございます。
カッコよくて強いキャネスンと、気弱でも真の強さを感じさせる少年。
何度も読み直してます。
兼さんかっこよいです。少年と兼さん最高です。
最高にかっこよくて素敵で春の匂いがたっぷりのいいお話でした!!ありがとうございます!
気弱な少年の成長と兼さんのカッコ良さが最高に最高です!!!!
うちの本丸の堀川くんがきゃっきゃしながら読んでます。素敵な物語をありがとうございます!
最高です。
後の世に、様々な男士が顕現し、そこで出会う仮の主達とのお話とは、思いつきませんでした。
素敵なお話をありがとうございました。
また書いてくださいね。
素敵な作品と、こんなに素敵な場所をありがとうございます。
最高の小説を読んじゃったね!!!!!!隠居には分かる!!!!!!少年ーーーー!!!!!!少年とかねさんの組み合わせは最高なんだよね!!!!!!!
ありがとうございます!!!!!!!!!!!!もっとください!!!!!!!!