翌日、近所の剣道場。
竹刀を担いだ和泉守兼定と、木刀をぶら下げて半分涙目のトシミツがいた。
「やめませんか……」
「いいや、やめねえ。どうせ敵さんがいつ来るか解らねえからな、暇なのは性に合わねえ。任務のついでに手合わせといこうじゃあねえか」
そんなことを言われても。昨日のあの戦いぶりを、呆然と眺めていただけでもわかる。この男がどれだけの実力者か。
そんなの相手に、何ができるというのか。防具で体を固めたトシミツは仕方なく、木刀を中段に構えた。相手は防具を一切つけず、竹刀を手にしただけだ。
「構えは上出来じゃねえか。いいか、寸止めなんて甘いことしねえぞ、思いっきりいくからな!」
「はっ!?」
ぱん、と音がした。とっさに受けることが出来たのは、奇跡かもしれない。目の前に、思い切り下ろされた竹刀と、それを押し込む和泉守兼定が迫っていた。
「へーえ、受けたな? いい筋してんな」
にやにやとしているのは本気ではない現れだ。いや、本気で斬りかかられたら、きっと得物が竹刀であっても頭が割られるかもしれないと冷や汗をかく。受け流し、足を引いて距離を取る。
和泉守兼定は腰を深く沈めて下段に構えた。ふわりと道場に風が吹き、その長髪を攫う。なんてことを見ているうちに、隙を突かれて頭を強かにうたれた。
「いったあああい!」
「お前なぁ、サシでやりあってんのに本当に見とれちまうやつがあるか! だめだだめだ、打ち込んでこい!」
再び正眼に構え、トシミツが木刀を振りかぶる。
軽くいなされ、面を叩かれた。おまけに背中に蹴りを一発。
つんのめったトシミツに、厳しい檄が飛ぶ。
「声が小せえ! 腹から声出せ!」
そんなことを言われても。
やけくそに打ち込んでも、何度も叩かれ、弾かれ、打たれる。
「気合と力が足んねぇ! おら、今のでまた死んだぞ!」
実に荒っぽいしごきに、半ばやけくそでトシミツは刀を振るった。
ひとしきり打ち合って……否、叩かれて、二人並んで休憩中、トシミツがぽつりと口にする。
「……声が、出ないんです」
「なんで」
「……大きい声を出すのが、苦手で」
注目されるのが苦手で、目立つのが苦手で、そんな彼に両親が勧めた部活に言われるがままに入って、それでもとかく青年は、声をだすのが苦手だった。
おまえなあ、それでも――、と言いかけて、和泉守兼定はぐっと口を噤んだ。
「それでも?」
「いや、……なんでもねえよ。よォし、もう一本いくぞ!」
「ええーっ……」
日暮れまでたっぷりと打ちのめされて、和泉守兼定が空腹を訴えるまで、手合わせは続いた。いくつもの痛みを勲章に、トシミツと和泉守兼定は家路につく。
兼さんが最高に兼さんでした!!(語彙)
なんだかんだ面倒見が良くて、気のいい兄貴ってカンジで!
トシミツくんも、兼さんとの別れで記憶はなくしたけど、これからの指標が見えたんじゃないでしょうか。
自分でもわからないなりに、土方歳三関連の資料を読み込むようになるかもしれないですね!
最高でした!読了後、爽やかな風が吹き抜けたような心地になりました!
素敵な作品をありがとうございます。
兼さんがカッコ良すぎる!!!!!
心の堀川くんがペンラと団扇をぶん回してました。
兼定をよろしくお願い致します。
トシくんの名前が出たとこでもう、うあーーーーて転がってしまいました。
兼さん、存在が格好いい兄ちゃんなのに、さらに格好よさあげてくるから最高……!誉!優!!ありがとうございます!!
最初は不本意な始まりでも、それを続けられるのは1つの才能。兼さんはそれも見抜いて、少年(青年?)と打ち込みをしたのかもしれないなと思いました。
記憶には残らなくても、なぜか体が、感覚が知ってる……って、後々まで不思議な気持ちになってくれるといいな、とか。
あまりの格好良さ、彼らしさに兼さーーーん!!!って声出してキャッキャしたい気持ちをグッと堪えて(拝読したのが夜中なもので)、兼さんが去った後の風をくんかくんかしたいと思います。(くんかくんか、もう死語だったらすみませんっ)
すごくすごく素敵なお話を、ありがとうございました!!
もっと拝読したいです!!!
読ませていただきました。短い出会いの中にも起きるトシの成長、さわやかな読後、言葉遣いの巧みさに、めちゃくちゃ引き込まれました。文章もプロなのですね!もっと読みたい!
電車の中で拝読し目頭が熱くなりました。
心の中でが暖かくなる素敵なお話を書いて頂きありがとうございます♪
最高の作品をありがとうございます。
カッコよくて強いキャネスンと、気弱でも真の強さを感じさせる少年。
何度も読み直してます。
兼さんかっこよいです。少年と兼さん最高です。
最高にかっこよくて素敵で春の匂いがたっぷりのいいお話でした!!ありがとうございます!
気弱な少年の成長と兼さんのカッコ良さが最高に最高です!!!!
うちの本丸の堀川くんがきゃっきゃしながら読んでます。素敵な物語をありがとうございます!
最高です。
後の世に、様々な男士が顕現し、そこで出会う仮の主達とのお話とは、思いつきませんでした。
素敵なお話をありがとうございました。
また書いてくださいね。
素敵な作品と、こんなに素敵な場所をありがとうございます。
最高の小説を読んじゃったね!!!!!!隠居には分かる!!!!!!少年ーーーー!!!!!!少年とかねさんの組み合わせは最高なんだよね!!!!!!!
ありがとうございます!!!!!!!!!!!!もっとください!!!!!!!!