ーーフランス、パリ、サントノーレ通り
行きつけのカフェでクロワッサンとカフェオレの朝食を取って。
いつも通りの休日の朝を過ごす「彼女」は、カフェの重い扉を開けて外に出ると、すぐそこに青年がひとり立っているのを認めて立ち止まった。
緑色のジャケット、ピンクのニット、腰には刀。異様ないでたちをした青年は、こちらが心配になるような顔色で、悲壮感を漂わせながら口を開いた。
「……村雲江。俺と一緒に、東京に行って」
思わずサングラスをずらして見た青年の色彩は、故郷の桜を思わせた。
***
「なんて、二束三文の俺がいきなり来て言っても従う訳ないよね……」
村雲江は、胃の辺りを抑えて自虐的に笑う。パリ、巴里、ぱり。どこだそれ。何で自分はこんな所に来てしまったんだ。
古い石畳と高級ブティック、街を行き交う人々の服装は洗練されている。俺より遥かに高そうなものばかり、とどんどん頭から血の気が引いていった。
ーーこの時代に、歴史修正主義者の大きな侵攻があった。
戦況によっては、本丸の審神者ーー主の存在も揺らいでしまう、そんな危険な状況なのだという。
そこへ補充戦力として、本丸を代表してこの時代に送られた自分。
存在の揺らぎを防ぐため、「仮の主」と同行することがここで戦う条件だった。
二束三文の自分の仮の主、どんな人かと思えば。
質の良さそうな仕立てのジャケットに高いヒール、シンプルなシャツの胸元に光る宝石、大きなサングラス。
目の前に立つのは、積み重ねた年齢すらもアクセサリーとするような、しゃんとした婦人だった。
その姿はこの街によく馴染んでいた。
「ねえ、きみ」
「きみ、はしっくり来ないわね。そうねえ、マダムと呼んでくれたらいいわ」
「ま、まだむ」
『Oui.』
婦人ーーマダムは、サングラスを外してシャツの胸元に引っ掛けてから、村雲を上から下まで見分するように見る。
「うう、」
刺さる視線と居心地の悪さに呻くと、「あら、ごめんなさいね」と彼女は笑った。そうすると、とっつきづらそうな雰囲気が和らぐのが印象的だった。
「ちょっと待ってなさい」
彼女は村雲にそう言うと、携帯電話を取り出してどこかに電話をかけ始めた。
『Allô!』
数分会話を交わしてから、電話を切る。
そしてもう一度村雲を上から下まで見て、ひとつ頷いた。
「悪くないわね。ついてきなさい」
「ええ?!」
サングラスをかけ直し、肩にかけたジャケットを翻して歩き出すマダムを、村雲は訳が分からないまま追いかけた。
マダムがカッコよすぎて惚れました!
村雲江にはこれくらいの主が似合いかも。
ラストのマダムが村雲を送り出すセリフがまたカッコいいこと!
面白くて、あっという間に読んでしまいました。マダムとっても素敵です!村雲江は知らずとたくさんの選択肢の中から、マダムを仮の主に選んで顕現したんだなあとにこにこしてしまいました!素敵な物語ありがとうございます!
面白かったあああああ!!!!
爽快!テンポがいいのにかけあしすぎなくて読みやすくてはらはらわくわくした!
大好き!マダムかっこよ!!!!
まさにマダム!!
こんな歳の取り方をしたいです!
70億の人間の中から選んでくれた、という理由でパリから東京に飛べる財力もほしい!!(笑)
村雲江のかわいさとあいまって、とても素敵な仮主従でした…!
わん!!!!
マダム格好いい!!
機上で雲を見下ろしながら、貴方の名前と一緒っていうところがとても好きです!
マダム、かっこいいです!!
高級店と飛行機にびくびくしている村雲江も可愛かったし、何と言っても最後の、マダムが発破をかける台詞が素敵でした!