長い足を長時間折り曲げたせいで、飛行機から降りた時には関節と言う関節からばきばきと音が鳴った。折れそうだ。
「それで? 東京のどこに行けばいいのかしら」
村雲より遥かに元気な様子の婦人は、カツンとヒールを鳴らして尋ねた。
「え、えっと、渋谷? だって」
「オーケー、なら京急でまず品川ね」
勝手知ったる様子で、颯爽と歩き始める彼女を、また慌てて追いかけた。
品川で山手線に乗り換えて。
電光掲示板がいよいよ次は『渋谷』だと告げた時、ガコン、と大きな衝撃とともに電車が停止した。
車内でバランスを崩した人々の悲鳴が聞こえる。
咄嗟に彼女が転ばぬよう抑えた村雲の耳に、渋谷駅周辺のトラブルによりホームに入れない状況のため、緊急停止をした旨のアナウンスが入る。
「ーー時間遡行軍だ、」
慌てて窓の外を見ると、高架下に禍々しい気配の異形の群れ。
村雲の視線を追った彼女が尋ねる。
「あれが、貴方の敵?」
「……うん、俺たちの、敵だよ」
「そう、私たちの、ね」
一つ頷くと同時に、彼女はドアの上『非常用ドアコック』の赤字が記されたつまみを引いて、中のハンドルを思い切り引いた。
そして、何をしているのかと村雲が尋ねるより早く、ドアとドアの間に指をかけ手動でそれを開いた。
「行くんでしょう」
サングラスを外した、年を重ねた美しい瞳が、村雲をまっすぐに見据える。
目を合わせて。村雲は口を緩ませて、刀の柄に手をかけた。
ーーああ、俺は二束三文だけれど。仲間に、主に、仮の主にまで、恵まれた。
守らなければ、繋がる歴史を。
彼女が半分まで開いた扉を、両の手で全開にする。
そして、彼女を振り返った。
「ありがとう。ねえ、最後に一つだけいい?」
「何かしら」
「俺の名前を、呼んで」
村雲の頼みに、彼女は笑った。
「ーー村雲江、お征きなさい!」
ぐ、と一歩踏み出して、村雲江は高架から眼下の戦場に飛び降りる。
朝の風が、付喪神の桜色の髪を揺らすのが美しかった。
マダムがカッコよすぎて惚れました!
村雲江にはこれくらいの主が似合いかも。
ラストのマダムが村雲を送り出すセリフがまたカッコいいこと!
面白くて、あっという間に読んでしまいました。マダムとっても素敵です!村雲江は知らずとたくさんの選択肢の中から、マダムを仮の主に選んで顕現したんだなあとにこにこしてしまいました!素敵な物語ありがとうございます!
面白かったあああああ!!!!
爽快!テンポがいいのにかけあしすぎなくて読みやすくてはらはらわくわくした!
大好き!マダムかっこよ!!!!
まさにマダム!!
こんな歳の取り方をしたいです!
70億の人間の中から選んでくれた、という理由でパリから東京に飛べる財力もほしい!!(笑)
村雲江のかわいさとあいまって、とても素敵な仮主従でした…!
わん!!!!
マダム格好いい!!
機上で雲を見下ろしながら、貴方の名前と一緒っていうところがとても好きです!
マダム、かっこいいです!!
高級店と飛行機にびくびくしている村雲江も可愛かったし、何と言っても最後の、マダムが発破をかける台詞が素敵でした!