40000メートルの先に世界/あの - 5/5

部活でやってるスポーツの東京大会へ、見学生として選ばれた。

だが出発する日、空港で売店エリアをうろついていたら大き目の荷崩れが起きて、それに巻き込まれた。

気が付けば病院。目覚めた瞬間人生最大レベルの筋肉痛に絶叫した。体中に痣。片足が捻挫。もう片方の足は小指を骨折。

さらに不運なおまけ。

知らされた東京の大会は日付が間違っていた。

そのうえ見学生に選ばれてたのは実は別の子。人違いだ。

大会本部が間違えて深磨に通知を送ってきたのだ。

こっそり持ち出したヘソクリはまんまと親にばれて、貯金に回されてしまった。

「ほんとミマちゃんだよねえ」

「ミマちゃんの残念力はもはや才能だよ」

そう見舞いに来た親戚達がからかってゆく。

いつもならジワジワと落ち込んでゆくのだが、なぜか今回、深磨はヘヘッと笑って終わった。

理由は分からないが『何かをやった』という気持ちが不思議なほど胸いっぱいに満ちていた。

……不思議といえば、リュックの中に苺のカステラが五つも入っていた。

買った覚えはないのだが、これだけの怪我をしているくらいだから、頭を打って忘れてるのかもしれない。

でも何だってこんなに買ったんだろう。

結果入院生活の少ない楽しみにはなったけど……。

そのうちの一つを食べ始めながら、深磨は首をかしげた。

そして、退院したら稽古を休んで何をしようか……などと考え始めた。

何故か、稽古は休むとはっきり決めていた。

テレビで聞いたのか本で読んだのか忘れてしまったが、

『世界は本当に広いのだから、君が心から打ち込めることがきっと山程あるよ』

という言葉が、目覚めたときからずっと深磨の心の中でわくわくわくわく踊っていた。

〈終〉

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