守るものとは∕紅紀 - 2/7

あれから私が歴史専攻の学部だという事と学芸員資格に挑戦していた事を知った自称『毛利藤四郎』くんは苦手な範囲を実例を面白可笑しく交えながら教えてくれたりとなかなか優秀な家庭教師となっていた。
お陰様で苦手意識の克服も出来るのでは?と思うくらいには理解が出来るようになったのだから凄いと思う。

何より自称とは言え、『三本の矢』の毛利家の刀だと言うその短刀を持たせて貰った事で知った刀の重みや大切にされて来ただろう装具の造りや責任の重みを知ったのは大きかった。

そんな毛利くんの希望たって私達は東京行きの新幹線に乗っていた。

「凄いですよ!馬や僕達が走るより速いです!あ、あれは何でしょうか」

猛スピードで通り過ぎていく外の風景に窓へ張り付いて目を輝かせている姿はやっぱりどう見ても子供で、微笑ましくなりながらも参考書を開く。
また学芸員資格認定へ挑戦する為に。

「今日は何の勉強ですか?」
「あれ、もう窓の外は良いの?」
「はい、沢山見たので」

小さく小さい子もと聞こえたのは気のせいにしておく。
そう言って参考書のページへ視線を落とし、二人であれはこうでと復習しつつ巡回で来た車内販売名物カチカチのアイスを買って二人でスプーンが入らないと笑っているとあっという間にの新幹線の旅は終わり、東京へ到着した。
古い建物である東京駅に残る戦時中の痕跡を探しながら曇り空の駅舎外へと足を踏み出す。

「それで、何処に行きたいの?」
「それなんですけど、皇居へ行きたいんです」

彼処には僕の兄弟も居ますから。
今思えば、そう言った毛利くんの目は何かを慈しむようなそれに見えた。
それならと地下鉄ダンジョンへと足を踏み入れた。

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