「僕は毛利藤四郎と言います。短い間ですがお世話になりますね!」
周りに流されるまま何となく受けた学芸員資格認定の不合格通知が届き、やっぱり無理だったじゃんとベッドでゴロゴロ腐っていたある日、突然ワンルームへ桜吹雪と共に派手な髪色の少年が現れた。
当然ながら唐突な事でフリーズしたのは言うまでもなく、そのまま脳内では某RPGの「なかまにしますか?」のテロップが浮かんでいた。
戸締りはしっかりしていたはず。
ドアスコープも水道修理業者のマグネットで塞いでいるし、新聞受けも覗き対策に鏡を仕込んであるから覗かれる心配もない。
窓も帰ってきてから一度も開けていないし、割れた音もしなかった。
なのにどうやって入ってきた?
「…ボク、いったい何処から入ってきたの。お母さんとお父さんは?それに軍服みたいなの着て何かのごっこ遊び?」
不法侵入云々は子供にはわからないだろうとベッドから起き上がり、屈んで目線を合わせると出来るだけ優しい口調で問えば不満な顔になったのは言うまでもない。
「何処って今さっき到着したばかりですよ。それにごっこ遊びでもありませんし、僕は子供じゃありません」
室内なのに気が付いたのか帽子と靴を脱ぐ辺り、まだお利口さんな部類の少年の言葉に私は疑問符がまた一つ増える。
子供じゃないと言う少年の頭から爪先まで観察するもやはり子供のそれで「子供じゃん」と結論付けるまでそう時間は掛からなかった。
そうじゃないと言うなら何なのだろう?
ふと昔見たパニックホラー映画が脳裏に過ぎる。
「まさかエ〇ターみたいに子供のフリをした…!」
「そのえす〇ーと言うのはわかりませんけど、違います」
うん、キレッキレなツッコミだ。
それから信じていないなとじっとりとした目をした少年は腰に差した警棒のような物を手にトコトン説明してくれるまで約二時間。
まだ半信半疑な私を無理矢理納得させる為に少年の姿を消して刀が宙に浮くなんて状況まで見せてくれたのだからもう納得するしかなかった。
こんなオカルト案件、実際に見ないと誰も信じないって!
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